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大阪地方裁判所 昭和34年(タ)19号 判決 1959年10月20日

原告 肥塚富雄

被告 肥塚義雄 外一名

主文

原告の訴を却下する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

原告訴訟代理人は、「原告が被告両名間に出生した子であることを確認する。訴訟費用は原告らの負担とする。」との判決を求め、その請求原因として、

「(一) 原告は、戸籍簿上は被告義雄の父母である亡肥塚伊之助と、その妻肥塚アイ間の嫡出子三男として記載されているが、真実は右両名間の子ではなく、被告両名間の非嫡出子である。

(二) すなわち、被告らは、以前内縁の夫婦であつたところ、その内縁関係継続中、被告千代は被告義雄の胤を宿して懐胎したが、大正一五年五月下旬頃被告らは内縁関係を解消して、離別し、同年七月一日被告千代は、原告を分娩した。ところが、被告らの話合により、出生した原告は、被告義雄においてこれを養育することになつたので、同被告は、原告出生後原告を引取り、原告を前示同被告の父母伊之助夫婦間の三男として嫡出子の出生の届出をなした。その後原告は、昭和二年四月一四日訴外坂本已久松及びその妻豊子と養子縁組をなしたが、昭和一三年一〇月二四日協議離縁して復籍し、現在に至つている。

(三) よつて、原告は、真実に反する戸籍を訂正するため、被告らに対し本訴請求に及んだ次第である。」

と述べ

立証として、甲第一ないし第五号証を提出し、証人小川隅男の証言、被告両名本人の尋問の結果を援用した。

被告義雄は、原告の請求どおりの判決を求め、

答弁として、

「原告主張の請求原因事実は全部これを認める。」

と述べ、甲号各証の成立を認めた。

被告千代は、本件口頭弁論期日に出頭しなかつた。

理由

本件は、要するに、原告は、被告らの非嫡出子であるにかかわらず、戸籍簿上は、被告義雄の父母(いずれも死亡)の嫡出子となつているので、戸籍訂正の必要上、原告が被告らの子であることの確認を求めるというにある。しかし、判決の効力が第三者にも及ぶべき身分関係存否確認の訴は、固有の人事訴訟の目的と抵触せず、かつ必要ある場合のみに許されるべきである。すなわち人事訴訟手続法で明かに定めている訴により目的を達し得るにかかわらず、これによらないで、これと型を異にする身分関係存否確認の訴によつて、その目的を達しようとすることは許されない。例えば嫡出子否認の訴、もしくは認知無効の訴によるべきところを親子関係不存在確認の訴で代用しようとすることは許されない、今本件についてみるに、本訴は原告が被告らの子であることの確認を求めるにあるところ、原告から被告らに対する認知の訴によつて、その目的を達することができるから、右説示により、右確認の訴は法律上許されないものであると解するを相当とする。

以上の次第であるから、原告の本訴は、不適法としてこれを却下し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 安部覚)

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